私が三ヵ月マンスリーマンションで暮らした感想
2016/04/21

マンスリーマンションに入居する日、私はかつてないほどの身軽さを感じた。
それもそのはず、十回以上の引越し経験を振り返るに、これほどラクな引越しは初めてだったからだ。
なにしろ家具の配置を考えなくていいし、荷解きをしなくてもいい。
私が実際に持ち込んだのは数個の衣装ケースと、身の周りの物を詰めたスーツケース一つ。
小さな本棚に段ボール一箱分の本。
以上である。
スーツケースからノートパソコンを出して繋いでみると、何の問題もなく即ネットを使うことができた。
電気も水道も通っており、ほかには何もすることがない。
だが、どことなく部屋に違和感を覚える。
何かが事前に見た写真とは異なっているのだ。
やがてそれは床に敷かれたラグマットによるものだと気付いた。
備品にマットは入っていない。
前の住人の物をそのまま残しておくのは時々あることだ。
しかし私は絨毯やラグが好きではなく、床はできる限りゴシゴシ磨きたい。
たまに喘息の発作が出るせいか、毛足の長い敷物に埃が潜んでいる気がして気分的に落ち着かないからだ。
「これ、いらないのにな…」と呟きつつ端っこをめくり上げてみると、身体が凍り付いた。
なんと、お菓子の食べかすとおぼしきものがパラパラと落ちていたのだ。
清掃は直前に入っているにもかかわらず、ラグの下は磨いていないということか?
ぞっとしてすぐに管理会社に電話をかけ、ラグ下のおぞましい現状を告げた。
そもそもラグなど必要ない、すぐに撤去してくれと切に訴えたのである。
幸い清掃会社はすぐに飛んできたが、不信感は拭えない。
あちこちの掃除が手抜きなんじゃないかと勘ぐってしまう。
ラグ撤去後の床全体を目の前で磨いてもらった。
清掃のプロとしてこの汚さは如何かと問うと、「お詫びに新しい清掃用具一式を差し上げます。」ときた。
そういうことではない。もらっといたけど。
こうして余計な二時間を費やした後、ようやくくつろげる環境が整ったのである。
だがここでふと疑念を抱いた。
ないはずの物があったということは、あるはずの物がない可能性もあるのではないか…?
そこで契約書にある「部屋設備」一覧表を片手に、クローゼットやキッチン収納の中を点検していった。
初日から欠けていたのに、後から自分のせいにされたのではたまったもんじゃない。
すると案の定、フライパンと包丁が一点ずつ足りず、いくつかの食器類は数が一致していない。
念のためしっかりメモをとっておいた。
入居の際に自分の調理器具や食器を持ち込んだ人が、退居の際に備品と私物の区別がつかなくなったのだろう。
減っている物もあれば、増えている物もあり、一覧にはないのにそこに存在する物もあった。
おそらく細々した物の数が増減するのはよくあることなのだろう。
最終的にキッチン用品の点数については何も言われなかったが、マンスリーに入居した際にはざっと点検しておくことをお勧めする。
さて暮らし始めてみると、思いのほか快適な環境だと感じた。
前記事にも述べたように、マンスリーマンションは概して好立地にある。
地下鉄駅まで、いやホームまでも3分とかからず、朝がラク。
またあらゆる用事が徒歩で済むため、交通費はかなり浮いた。
ただ一ヵ月ほど住むと分かるのだが、住人の出入りがけっこう激しい。
マンスリーなのだから当然ではあるが、そのためよくあちこちでバタバタしている。
今日は隣りの部屋をクリーニングしているな、と思えば翌週には上の部屋をクリーニングしている。
運もあるが、そういった環境は念頭に入れておいたほうが良いだろう。
それ以外のデメリットは一切感じず、ただただ便利で快適だった。
数ヶ月後に退居する際も、拍子抜けするほど引越しがラクで、「もう一生マンスリーに住みたい!」と思ったほどである。
そういうわけにはいかないが、マンスリーに住むメリットがデメリットを上回る際には、取り入れない手はないと思う。