ミチカの引越し人生〜旅するようにおひっこし

特技は物件探し!15回の引越し経験者が綴るリアル引越しライフ

読んではいけない短編小説集『お引っ越し』

      2016/05/16

 

子どもの頃から本の虫、大学は文学部を出ている筆者ミチカ。

読書は趣味で、一冊の小説を何度も味わいたく繰り返し読むことがある。

しかし、二度と読みたくない小説に出会ってしまった。

タイトルは『お引っ越し』

真梨幸子氏による短編小説集で、「扉」「棚」「机」「箱」「壁」「紐」そして「解説」の七編から成る。

たまたまこの作家を知らなかったので、気付かなかったのだ…これが一種のホラーだということに。

以下、肝心な部分のネタバレは避けているので、安心して読んで頂きたい。

 

「扉」

まずトップバッターの「扉」がいきなり怖い。

物件探しのシーンから始まるが、転居の理由が何より嫌だ。

殺人犯が前の住人であることに気付いてしまうのだ。

事故物件には当たらないので、不動産会社には説明の義務がない。

しかし事実を知ってしまった主人公は、いつかその男が自分の部屋に帰って来るのではないかという強迫観念に囚われる。

世の中には確実にこのような物件があるということを改めて思い知らされた。

 

だが本当に恐ろしいことは、新居候補のほうで起こる。

避難用扉の先にある狭いスペース…本来なら「非常口」は、人の命が助かるために存在する。

だがその先の蓋が開かないと…(この先は読んでみてほしい)。

 

避難経路は多いに越したことはないが、機能しないと単なる危険スポットにもなり得てしまう。

外からしか開かない扉というのは恐ろしい。

我が家のベランダにも避難ハッチがあり、半年に一度必ず点検に来る。

家の中に入られるのでどうしても煩わしく思いがちなのを反省した。

 

 「棚」

「棚」は読んでいると、もどかしくてイライラして息苦しくなってくる。

何に?―なかなか進まない引越し準備に!

私はこの編の主人公のような優柔不断ではないが、それでも思うように準備ができない焦りは毎回感じる。

気付くとあと何日、あと何時間、あと何分…

 

それにしても驚くのは、主人公が引越しをする理由だ。

人間関係の整理のための引越しというのは考えたことがない…。

 

 「机」

「机」には怪しい引越し業者が登場する。

やたらとクレームが多いのは、ここに頼むと見積もり以上の料金をとられるし、荷物がしばしば紛失するからだ。

明らかに盗みを働いている業者…こんな引越しセンターにモデルがないことを切に祈る。

 

盗んだと思しき大型冷蔵庫の中に入っていたものは―?

この短編集の怖さは幽霊などオカルト的なものに因るのではない。

一番怖いのは人間なのだ…。

 

「箱」

「箱」はオフィス内の引越しに関する物語だ。

だがここで怖いのは女のいじめ。

お局が、若い女性社員をいじめたおす。

主人公の荷物の箱が、故意に別の階に持ち運ばれ紛失させられる。

最後まで見付からない一つの箱を必死に探す主人公、果たしてその中には何が…?

 

私はかつて女ばかりの職場で働いており、すぐ近くのビルにオフィスの引越しをしたことがある。

女ばかり、和気あいあいと楽しく作業したものだが…我が幸運が身に沁みた。

 

「壁」

「壁」に出てくるのは、一見典型的とも思える隣人トラブルだ。

隣りに引越してきた夫婦の部屋から、夜な夜な悲鳴や騒音が聞こえてくる。

寝不足で神経が衰弱した男は、よかれと思ってある行動をとるのだが―。

 

隣人の生態と言うのは、引越して数日経たないと掴めない。

私が学生時代に住んでいたアパート、隣りには優しい男の先輩が住んでいた。

一月ほどで気付いてしまった、先輩には「彼氏」がいて、週末の夜には濃密な時間を過ごしていることに…。

一度あまりの物音に思わず壁にキックを入れたところ、先輩は二度と私と目を合わせなくなった。

バレたな、と悟ったのだろう。そりゃあバレる、あの音にあの声だもの。

だがそれで済んで幸いだった。

 

 「紐」

「紐」は、グー○ル・ストリートビュー散歩好きの私には、腰の辺りからゾワゾワする物語だった。

主人公の住む物件は、第一話「扉」に登場するまさにその部屋だ。

誰もいないはずの空間から歌声が聞こえてくる。

その声の主とは…?

 

まとめ

私がこの本を読み出して最初に感じたことは、

「この短編集に『お引っ越し』なんてタイトルを付けないでくれーっ!」

である。

なにしろタイトルだけで借りてしまったので後悔した。

怖い話にはめっぽう弱いのに…。

しかも真梨さん、読者を追い詰めるのがとても上手い。

 

皆さんはどうだろう?

この本を手に取ってみたくなっただろうか?

 

どうしても気になる方は、夏に読まれることをお勧めする。

熱帯夜の暑さも忘れられることだろう。

 

だが引越し前後に読むのだけは、やっぱりやめておいた方がいいと思う。

もしそれでも読みたくなったなら、ぜひ「解説」から読み始めてほしい。

きっと涼しさは倍増するだろうから。

 

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