理想のシンプルライフ―必要&大切なものだけ持って暮らしたい
所有に関する理想と現実
物欲について言えば、私はあまり持ち合わせていない。
「所有」よりも「経験」にお金を費やしたいタイプである。
しかし我が家に物がないかと言えば、残念ながらそうではない。
知人に頼まれ、骨董品をオークションでさばいているのが主な原因だ。
商品が何箱分もあり、広い収納スペースのかなりの割合を占めている。
オークションは転妻でも家でお金を稼げる簡単な方法の一つだが、在庫を抱えるため家に物が増えるのがデメリットだ。
ただ、オークションを辞めてしまえばその問題は解決するだろう。
それでもなお、我が家は広い収納を必要とする。
なぜなら、私が「着物持ち」だからだ。
長く日本舞踊をやっていたため、着物の所有は不可欠だった。
だが着付けに必要なのは、和服だけではない。
着物の格に合った帯各種、襦袢、草履、和装小物など、けっこう場所をとる。
重量もある。
私自身の荷物で最も大きいのはこの着物や帯たちだ。
これらもオークションで売ってしまえば良いのだろう。
だがほとんどの着物が日舞の姉弟子からの頂きもので、思い出も思い入れもあるものゆえ、易々と他人の手に渡らせることはできない。
私自身、着物に愛もある。
転妻となってからは日舞を続けられなかったので、いずれ数を少なくしていかなければと思うが、どう手放すのか悩ましい。
このような状態なので、実際のところ私なりの理想の暮らしにはほど遠い。
私の理想―それはできる限り物を減らし、シンプルに暮らすことである。
海外移住した友人のシンプルライフ
ところで先日、シンガポールに移住した友人に会ったので、彼の住環境について聞いてみた。
すると感動するほどすっきりと暮らしていた。
はじめに日本からシンガポールへの引越しについて尋ねた。
日本で彼は一人暮らしをしていたから、それなりに物はあったはず。
海外への引越しはさぞ大変だったに違いないと想像したのだ。
まず家具・家電などの大物は、使えるものは友人・知人にあげて、古いものは処分したと言う。
ここまでは予想通り。
それ以外の荷物は段ボール3箱を実家に送り、残りの段ボール3箱をシンガポールに送ったそうだ。
あとはスーツケースが1個とギターのみ。
そして向こうに移り住んで5年以上になるが、ほとんど物は増えていないそうだ。
なんて身軽だろう!
彼はHDBと呼ばれる公営住宅に住んでおり、シンガポール人家族のお宅に間借りしている。
よってやたらに荷物を増やせる状況ではないというのもあるが、大人の男性一人にとって最低限必要なものと大切なものは、ほんの数箱の段ボールに収められるということだ。
これならいつでも引越せる。
どこにでも行ける。
彼のように潔く生きられたらなあと心から思う。