安アパートの水漏れトラブルと呆れる住人実話
2016/09/02
引越し回数が多いと、新居探しの段階も含め、実に様々な物件を目の当たりにする。
年齢を重ねるごとに住む部屋のランクは自然と上がるので、最近はそうヒドい物件にはお目にかからないが、かつてうんざりするアパートに住んだことがある。
当時私は20代半ば。
自分に選択権があれば、第一印象で即却下するような物件だった。
しかし結婚を前提に付き合っていた恋人がすでにそこに住んでいて、将来の資金を貯めるためにそのアパートで同棲を始めたのだ。
元々二人入居可の物件で、きちんと大家に許可をとり、住民票も移して二人暮らしを始めたところだった。
サイアクな物件の詳細とカレがそこを選んだ訳
それは築30年は余裕で超えるだろう古い建物だが、2Kでキッチンが広く、地下鉄の駅から徒歩5分。
近所には商店街も役所も病院も図書館もある。
この条件で家賃は月42,000円。
某百万都市の郊外にある住宅街という立地だ。
アパートは2階建てで、部屋数は4。
そっくりなアパートが前後に二軒並び、さらにその奥に大家の自宅がある。
広さと便利さ、何より家賃の安さで、倹約家のカレはそこに決めたのだそうだ。
なぜ私が「第一印象で即却下するような物件」という感想を抱いたかというと、何よりもアパートの雰囲気である。
言葉にするのは難しいが、単に古いだけではなく、一言で言えば「ガラが悪そう」なのだ。
実際そこで得られたのは、「物件レベルと住人レベルは比例するのね…」という残念な感想のみ。
誤解しないで頂きたい、あくまで個人的感想である。
だが事実、トラブルがよく起きた。
トラブル1・起きたら天井から水が流れてくる部屋
ある日のこと。
仕事で夜の遅い私が午前9時に目を覚ますと、とっくに出社した彼からメールが届いていた。
「キッチンの天井から滝のように水が流れてくるから気を付けて!」
なんのことかと起き出すと、テーブルにはメモもあった。
「台所の天井から水漏れ。起きたら大家に連絡お願い。」
驚いて見てみると床には水たまりができており、見上げた天井板からは水滴が落ちている。
カレが何度も拭いたのだろう、濡れた雑巾が山のように置かれていた。
非常事態である。
トラブル2・上の階の住人が頭おかしい
仕方なく奥の大家の家に向かうべく部屋を出ると、上の階から乱暴にドアを開ける音がする。
「ちょっとアンタ!!」
とゴワゴワの声が降って来たので見上げると、パンチパーマの中年女が仁王立ちでまくし立ててきた。
「あんたの旦那、頭おかしいんじゃないのっ!?
朝の6時にうちに来て、水漏れしてるって言うのよっ!」
いきなりツッコミどころ満載の台詞である。
―頭おかしいという言葉はそのままお返ししますね。ちなみに夫ではありません。
淡々と答えるとパンチパーマは一瞬怯んだが、一気にまくしたてた。
「アンタの旦那、朝の6時にうちに来て水漏れしてるって言うのよっ!
どういう神経してんのっ!?常識ないのっ!?」
―はい?それは朝の6時にお宅から大量の水が漏れたからですよね?
「朝の6時に人んちに来るなんて非常識でしょっ!!キーッ!!」
―こちらが迷惑をかけに行ったのではなく、迷惑を被ったから仕方なく行ったんですが、まずそこを理解できていますか?
「何言ってんのアンタ!朝の6時に朝の6時に朝の6時にバカじゃないの!」
いやいやいや…(ため息)時間よりも水漏れの事実に目を向けようよ。
―じゃあ何時までこっちは汚い水をかぶって生活しろと?何様のつもりですか?
短絡的な人間は正論を言われると無駄にキレる。
パンチパーマは真っ赤な顔で日本語でも英語でも中国語でもない言語でワンワン叫びだし、冷静な議論は望めない状態となった。
冷静沈着が取り柄の私もさすがに不快の度を越した。
―じゃあ”あんた”!明日の朝は一滴も水を使わないでよね!
他人を”あんた”呼ばわりする奴ほど、自分が同じことをされると逆上するのは滑稽である。
まだなんか叫んでいるが無視して大家の自宅に向かった。
すでに疲労を感じつつ大家に水漏れの件を話すと
「あら~。ほんとう?去年直したのに~?」
と間延びした声と反応が返って来た。
知らんわ!
と言いそうになったが、とにかく惨状を見に来てもらって早急に対処してもらうことにした。
だがここから先もうんざりすることが山積みだったのである。
「自分なら絶対に住まない」という直感は間違っていなかった…つづく。